レクチンと糖鎖
糖鎖構造の樹上性
糖鎖は遺伝子(第一の生命鎖)、タンパク質(第二の生命鎖)に続く第三の生命鎖と呼ばれ、生物の生命活動にとって必要不可欠な物質です。
しかし、糖鎖は、グルコースやガラクトースなどの単糖鎖が直鎖構造ではなく、枝分かれした樹状構造で結合していますので、組み合わせの種類があまりにも豊富な為、難易度が高く、直鎖構造の遺伝子やタンパク質に比べると役割の解明は遅れています。
レクチンとは
レクチンを定義することは実に難しいですが、レクチンとは一般的には「糖鎖を特異的に認識・結合したり糖鎖と糖鎖のの橋渡し(架橋形成)するタンパク質」と考えられています。糖鎖には多くの情報が内在していますが、その中でもグルコースやガラクトースなどの単糖鎖の配列が意味する体系的な情報を認識できるのは、「糖鎖を特異的に認識・結合する」レクチンだけです。なお、レクチンはヒトを含めた動物や植物から細菌、ウィルスに至るまで広く分布しています。
レクチンを用いた糖鎖構造の解明
糖鎖の構造解析には、質量分析装置や液体クロマトグラフィーが使用されていますが、多様性に富む構造を決定するのは非常に難しいのが実情です。そこで、糖鎖の構造を全部解析しないで生物学的に意味のある部分的な特徴を抽出する糖鎖プロファイリングが検討され、特にレクチンを利用した手法が注目されています。
レクチンを用いた糖鎖プロファイリング
レクチンの種類によって、糖鎖に結合する箇所の構造の特徴つまり分岐度合、結合形態、末端修飾の有無などが異なっていることが判っています。糖鎖に結合するレクチンの種類によって糖鎖にどのような構造上の特徴があるかを識別できます。
そこで、数十種類のレクチンを厳選し、スポット状に並べて固定したレクチンアレイを開発しました。さらに、糖タンパク質に蛍光標識を施し、レクチンアレイと相互作用させると糖鎖が結合しているレクチンのスポットが発光します。そして、このレクチンアレイの蛍光画像を見て、どのスポットがどのくらい発光しているかを解析すれば、糖タンパク質に含まれる糖鎖構造の特徴やその度合が識別できます。