免疫と糖鎖の続きです。
自律神経と糖鎖
自律神経は約60兆個の細胞の働きを無意識に調整している神経で脳の指令を受けずに独立して働いています。自律神経には、正反対の働きをしながらバランスをとっている交感神経と副交感神経があり、交感神経が優位になると顆粒球が増え、副交感神経が優位にになるとリンパ球が増えて活性化します。
- 交感神経
交感神経からアドレナリンが分泌されると、増えた顆粒球の糖鎖に結合して、消化管の働きを抑制し、心臓や呼吸の働きを高め活動しやすい状態を作ります。 - 副交感神経
副交感神経からアセチルコリンが分泌されると、増えたリンパ球の糖鎖に結合して、心臓や呼吸の働きをゆるやかにして、消化液の分泌や消化管の蠕動運動を活発にします。
自律神経のバランスが崩れた場合の害
交感神経優位が続くと
- 顆粒球から出てくる活性酸素による組織破壊
- 血管収縮による血流障害で細胞での酸素と栄養分の不足及び老廃物の滞留
- リンパ球減少による免疫力の低下
- 臓器や器官の排泄や分泌能力の低下
が発生し便や尿の排泄やホルモン分泌に異常が発生します。なお、病気の約80%はこの状態で発症します。副交感神経優位の状態は望ましいと言っても、度を越す(45%超)とリンパ球過剰により下痢、アレルギー疾患、うつ状態が発生します。なお、病気の約20%はこの状態で発生しますが、リンパ球つまり免疫力が強いので、治りが早い傾向があります。
糖鎖の欠損による免疫システムの暴走
名古屋大学医学部の古川鋼一教授らの研究グループは、生物の細胞膜表面に存在する化合物の「糖鎖」が欠損すると、本来、自分の体を防御する役割の免疫システムが、健康な細胞を攻撃し、脳細胞が攻撃されるとアルツハイマー病のような症状を引き起こすことを突き止めました(2009年12月7日米国科学アカデミー)。
参考: 健康な脳神経に「糖鎖」が関与=アルツハイマー治療ヒントに-名古屋大
糖鎖はその名の通り、複数の単糖が結合して鎖状になった化合物で、細胞膜表面にあるタンパク質や脂質と結合し脳神経系の働きを維持したり、損傷すると修復したりする役割を果たしています。
同研究グループは糖鎖の変化と脳神経の変性の関係に注目して、遺伝子を操作することで、特定の糖鎖が欠損したマウスを作りました。 すると、通常は細菌やウイルスなどの病原体を攻撃・排除している免疫システムが、異常に活性化して、脳細胞を攻撃していることが判りました。そして、脳細胞はその攻撃によって炎症を起こし徐々に死滅し脳神経の変性を引き起こしました。
脳神経の変性はアルツハイマー病やパーキンソン病などの原因になっていますので、古川教授は「糖鎖が調整できれば、アルツハイマー病などの神経疾患の治療につながる可能性がある」と話されています。生命に大きく係わる免疫システムは正常な糖鎖によって維持されているという事です。
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