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うつ病と糖鎖の続きです。

うつ病と糖鎖うつ病治療の困難さ

現在、うつ病の原因は本人の気分(心理)とそのような気分にさせる社会のせいであり、治療効果がなかなか出ないのは精神科医の不勉強や能力不足と多くの人は考えているようです。

しかし、うつ病の治療を困難にしているのは必ずしも精神科医のせいではなく、実はうつ病の根本原因がまだ解明されていないからです。

うつ病患者の脳の状態は通常(1)「脳機能変化」つまり神経細胞の活動の変化とそれに伴う脳血流の変化、 あるいは(2)「神経伝達物質のアンバランス」と説明されています。ところが、脳血流の変化は他の疾患でも発生し、更に脳血流の変化はうつ病になった結果生じた事で原因ではありません。

一方、「神経伝達物質のアンバランス」ではセロトニンやノルアドレナリンなどの不足でうつ病になるとされています。しかし、例えばSSRI(選択的セロトニン取り込み阻害剤)を服用するとセロトニンは1時間後には増加するはずですが、何ら改善せず、改善し始めたのは1~2週間後で事はそう簡単ではありません。

うつ病の根本原因は不明ですが、一部のうつ病の原因は神経細胞の樹状突起の萎縮や神経細胞の減少ではないかという事まで判明しています。全容が解明されるまでには基礎研究(動物)だけでなく臨床試験(人)が必要ですので、まだまだ相当な時間が必要と思われます。

うつ病と糖鎖偶然発見された抗うつ薬

今や発病者が800万人、2人に1人が再発し、3人に1人は薬が効かないと言われているうつ病の治療法や治療薬には意外な事実があります。

通常、特定の病気の治療法や治療薬は病気の原因を解明し、これを改善する目的で開発されますが、うつ病の場合は全く逆で、原因が不明にも係わらず偶然に効果が発見されたものが使用されています。例えば、電気けいれん治療法は精神症状を伴うてんかんの患者が発作後のその精神症状が改善する事をヒントに開発されました。

現在、日本では使用されていませんがモノアミン酸化酵素阻害薬という抗うつ薬は、もとは結核の薬として使用されていました。ところが、臨床でこの薬を使用した結核患者の気分が高揚している事が判り、うつ病の治療に使用されています。さらに、三環系抗うつ薬は抗精神病を意識して統合失調症の治療薬として開発されました。しかし、臨床において統合失調症には効果はないが、うつ病には有効である事が判り現在も使用されています。また、双極性障害の予防や重いうつ病において抗うつ薬を強化する為にリチウムが使用されていますが、リチウムは元々これを飲むと尿酸が溶出するという化学的根拠の無い理論下で使用されていました。たまたま、うつ病患者が服用して効果が発見され現在も使用されています。

この様に、現在うつ病治療に用いられている薬は「本来は他の目的に使用されていた薬」が、偶然にも効果が発見された事を契機に使用されています。その様な事からか、抗うつ薬には様々な副作用があります。

うつ病と糖鎖うつ病と糖鎖との関係

脳内では千億個もの神経細胞が回路を形成し情報を処理しています。情報は神経細胞の中を電気信号として伝達されますが、高速の情報処理を実現するため、きつく巻いた絶縁体(髄鞘)は糖鎖を使って作っています。これにより情報伝達速度は100倍もアップします(秒速100~120m)。

脳内で糖鎖が不足すると、不完全(ゆるい)な絶縁体となり情報伝達が遅れスムーズに行われません。さらに、軸索末端のシナプス小胞から放出される脳内伝達物質のドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリンなどは次の脳神経細胞の樹状突起にある受容糖鎖によってキャッチされ伝達回路が作動します。この伝達が連続して情報ネットワークは作られています。

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